春になるとあちこちで見かけるカラフルなチューリップ。あんまり色が豊富なので、店先に並んだチューリップを見て「天然色で、染めていないチューリップが欲しいのだけど…」と聞いてくるお客さんがたまにいらっしゃいます。
どの色まで自然な色で、自然界のチューリップに存在しない色は何色なのか、自分用の覚書も兼ねてまとめてみました。
自然界のチューリップに存在しない色は何色?
全色網羅しているイメージのあるチューリップですが、実は青いチューリップだけは自然界には存在していません。もしどこかで青いチューリップを見かけても、それは天然の色ではなく、花に塗料を掛けるか吸わせるかして、人工的に染めた青になります。チューリップを染めることは、なくはありませんがあまり一般的ではないので、ネットで写真を見つけた場合はは殆どがフォトショップ加工でしょう。
花屋さんでは染めたチューリップを扱っていることがほとんどありません。ですので、店先に並んでいるチューリップはまず天然色だと思って大丈夫です。ちなみにパープルはあります。青みよりも赤みの強いパープルが多く、今のところ一番青に近いのはブルーエマブルという品種です。
花に珍しい色のチューリップは?
驚くべきことに、青以外の色は概ね制覇しています!花の色としては珍しい緑も、白にグリーンのラインが入ったスプリンググリーン、白みが強くモコモコしていてかわいいハーバーライト、黄色にグリーンのラインが入った個性的なグリーンダンスなど、とくべつ珍しいわけではなく、国内のチューリップ園でも見ることができます。
そしてなんと、黒いチューリップも存在します。黒!というよりは、すごく濃いパープルといった色のクインオブナイト、 クインオブナイトよりも存在感の強いブラックヒーロー、縁の白いジャックポットなどが、黒いチューリップに数えられています。
なぜ青い花は少ないの?
バラ、ガーベラ、ダリアなど、色の豊富な花に限って青だけなかったり、青い花で花束を作りたいけど、そもそも青い花があんまりないな?と、改めて考えると不思議に思いますよね。たまに青い花を見かけると、その花にあるのは青系統の色ばかりなことにも首を傾げます。
これは、それぞれの花が持つ色素に関係しています。植物の色素の中で代表的なのが、フラボノイド、ベタレイン、カロチノイド、クロロフィルという4種類の色素ですが、この中で花を青く見せる働きをするのが、フラボノイドの一種であるアントシアニン。特に重要な青色の色素は、アントシアニンの種類である「デルフィニジン」という色素です。
花屋さんでよく見かける人気の花、バラやカーネーション、キクには、デルフィニジンを合成する酵素遺伝子がないので、青い花が咲きません。チューリップの場合はすこし違って、デルフィニジンは合成できるものの、そこから濃い青にするための金属物質がない、もしくは働かせる機能が十分ではないため青い花が咲かないのです。
ですので、条件さえ揃っていれば天然の青い花自体はちゃんと存在していて、探してみると意外と見つかります。
色によって異なる!チューリップの花言葉
「思いやり」「博愛」が花言葉のチューリップですが、豊富な色それぞれに、異なる花言葉がついています。
恋愛に関する伝説の多いチューリップには、やはり恋愛絡みの花言葉が多く、赤いチューリップの花言葉には「愛の告白」、「真実の愛」、ピンクのチューリップには「愛の芽生え」、「誠実な愛」、パープルのチューリップには「不滅の愛」、白いチューリップには「失われた愛」、イエローのチューリップには「望みのない恋」、という意味が込められています。
そのほかにも、オレンジのチューリップは「照れ屋」、緑のチューリップは「美しい目」、斑入りのチューリップは「疑惑の愛」。チューリップの花言葉が「思いやり」であることを考えると、ネガティブな意味にも優しさが溢れているように感じられます。
ほかにもある!意外なチューリップのトリビアあれこれ
花に興味がない人でもチューリップは知っている、というくらい代表的な花であるチューリップですが、よく勘違いされていることや、聞いてみるとびっくりする事実がいっぱい!知っているとちょっと得意になれるかもしれない、チューリップに関するトリビアを集めてみました。
チューリップの原産国は?
チューリップといえば有名なチューリップ畑のあるオランダが有名ですが、実は原産国はトルコ。オランダに輸入されたのは16世紀で、お祭りで使われたり絵画になったりして、オランダ人にたいへん愛されました。日本のホームセンターで売っているチューリップの球根も、ほとんどがオランダからの輸入品です。
日本で本格的に栽培が始まったのは大正時代で、京都府、新潟県、鳥取県が有名な産地として知られていますが、現在では栽培面積では富山県が日本一を誇っています。
チューリップは何種類くらい種類があるの?
チューリップは種類がほんとうに豊富です。現在登録されている数は、なんと3000種類以上!それぞれが、花びらの形、花の大きさ、開花時期をもとに15のカテゴリーに分けられています。品種の豊富さからも、たくさんの人がチューリップを愛していることが感じ取れます。
チューリップの開花時期は?
春、入学式シーズンに小学校の庭に咲いているイメージの強いチューリップですが、大きく3つの開花時期に分けられます。早咲きのチューリップは3月中旬から4月上旬、中生咲きのチューリップは4月上旬から4月下旬、遅咲きのチューリップは4月中旬から5月上旬と、すべて合わせると2ヶ月ほど各地で見かけることができます。
花屋さんで切り花が出回るのはもう少し早くて、1月ころから店先に並ぶようになり、3月まででだいたい姿を消します。入学祝いに贈りたい場合には、早めに予約しておくと安心です。
切り花のチューリップを長持ちさせる方法
ときどき、「チューリップは可愛くて好きだけど、安くないのにすぐに枯れてしまうのが残念」と言うお客さんがいらっしゃいます。花を買い慣れていないと、すでに開花したチューリップを購入しがちですが、チューリップに限って言えば、ほんのり色がついていてようやく何色か分かるくらいの、まだ固いつぼみの花を購入するのがいいです。
チューリップはつぼみが開花して散るまでの速度が早いので、つぼみから飾ってぐんぐん咲いていく様子を楽しむのが一番!水揚げがよく、あんまり小さいつぼみだと咲かないかも…という心配もしなくて大丈夫です。
花を長持ちさせるためには毎日水切りをするもの!と、切り花について詳しい人ほど考えがちですが、チューリップは水切りをしなくてもよく水を吸い上げるので、週に1度根本を切るだけでも大丈夫な手入れの楽な花です。逆に毎日水切りをすると、どんどん水を吸って開花が早まり、そのぶん早く終わってしまうので、できるだけ長くつぼみ~開花までのプロセスを楽しみたい場合には、水切りは最低限に留めるのがおすすめです。
花瓶の水はどんどん減っていくので、毎日の水替えは行いましょう。