花屋さんでお得な買い物をしようとするときに気になるのは、これは新鮮な花なのかな、もしかして古い花を買わされてるんじゃないかな、というところですよね。切り花には賞味期限や生産日のようなものが記載されていないので、自分の目だけが頼りです。
そもそも花屋さんでは、古くなった花の扱いはどうしているのでしょうか?わたしの働いていた店の内情を紹介します。
古い花も売り物にするの?
おなじ金額を支払うのなら、1日でも長持ちする新しい方の花ががほしいな~~~と思うのは、当たり前のことですよね。わたしは今日使い切る牛乳を買いに行っても、できれば賞味期限の長いものを選びたくなるタイプの人間なのでよくわかります。
しかし花屋さんも商売。できれば古い花は売れない状態になる前に売って、ロスを減らしたい!というのはあたり前。そう思うと、今作ってくれているこの花束、もっと新鮮な花にできるんじゃないかな…と疑いの目で見てしまいます。
どんな商売もそうであるように、細かいやり方は店によってかなり差があります。中には売上重視で「ちょっとそれはどうなんだ?」と思ってしまうような花も売る、悪質な花屋さんもありますが、多くの花屋さんは花のプロとして恥ずかしくない商売をしています。すぐに枯れてしまうと分かっている花を、黙って正規の金額で売ったりはしていないのでご安心ください。
正直でない商売をしていると、すぐに評判を落としてしまいます。いまはインターネットもありますし、取り扱っているものが生き物であるからこそ、口コミは大切です。
花束に使われていたりする?
花束については、古い花のほうが映える場合にはそれを使う場合があります。古い、というと聞こえが悪いですが、古くて傷んでいる、というわけではなく、つぼみが開いて見頃になってきた、という状態です。
たとえばユリ。届きたての新鮮なユリは、まだ完全に緑色の固いつぼみの状態で届きます。季節や品種によって、最初の花が開花するまでに1週間かかることも珍しくないんです。
この届きたてのユリを使って花束を作ろうとすると、華やかさの足りない残念な花束ができあがってしまいます。なので、つぼみのユリは、花束で使う用にきれいに花を咲かせるよう店でお世話をしつつ、自宅用につぼみが欲しいお客さんに売ったりします。花束に使うのにちょうどいいのは、花が咲き始めて、つぼみもある状態のユリですね。
ガーベラなど、花によっては届いた瞬間から見頃の花もあり、そういう花を花束に入れる場合にはなるべく新鮮なものを使用します。花屋さんは、とくべつな理由があって贈られる花束の重要性はよく理解しています。古い花を使ってインチキしたりはできません!
おすすめ品やサービス品は古い花?
とびらの外や、店に入っていちばん最初に目につくところに並べられている、今日のおすすめ品コーナー。古くなった花を売るための戦略に見えるかもしれませんが、これらはほんとうにおすすめしている花のコーナーで、旬の花が安く仕入れられたのでおすすめすることが多いです。
季節の花は売れ行きもいいので、たくさん仕入れて目立つところに並べ、新鮮なまま売りさばくのができる花屋さんです。
売れ残った花はどうするの?
どんなに頑張っても、すべての花をいちばんきれいな状態で販売するのは、悲しいことに不可能です。売れ残った花の扱いは店によって異なるので「これこれでこうです!」という紹介はできませんが、わたしの働いていた花屋さんでの方法を紹介します。
売る努力をします
まずは少しでもロスをなくすために売る努力をします。といっても、古くなってきたな、という自覚のある花を新鮮な花と同じ値段では売れないので、状態を見て値引くか、古くなってきた花で簡単なアレンジをして安い値段をつけて売ります。
どちらの場合でも「ほかの花より古いよ」ということが分かるように、見切り品専用のコーナーを店の隅に作ります。できれば新鮮なほうの花を売りたいので、基本的には目立たない場所です。
花がどれくらい日持ちするかは花の種類によってまちまちですが、少し傷んできたな、という見た目でも気にならない、というお客さんには、見切り品目当てのかたも結構いらっしゃいました。見切り品の常連さんもいたのですが、そういうお客さんは花に詳しい方も多いので、なぜか話が盛り上がることも多かったです。
常連さんや子どもにサービスします
値引きをして売るのと同じタイミングで、常連のお客さんや、子供連れのお客さんにサービスすることもあります。常連さんが買った花に合う花をおまけでつけたり、「これお母さんにあげて~~」って言いながら短く切った花を子どもにあげる感じです。
まったくお金にはなりませんが、もらったひとは喜んでくれますし、これくらいの余裕があったほうが花屋で働くのは楽しいです。
それでも残る場合は泣く泣く処分します
ここまででできるだけ残らないように努力をしますが、それでも完全にゼロにするのは難しく、古い花ばかり溜め込んでスペースを圧迫されるわけにも行かないので、悲しいですが処分します。生ゴミです。
店の規模が大きいと、排気の量もけっこう大量になり、なるべく小さくまとめるために茎をバキバキ折るのは心も折れる作業です。
こんなこともありました
映画科?の学生さんで、課題で映画を作成するのにたくさんの花を使いたいので、廃棄品を安く譲ってほしい、というかたがいらっしゃったことがありました。取りにいらっしゃる、という日に合わせて古い花を残しておいて、普通車のトランクがいっぱいになるくらいの量の痛み初めの花を、800円くらいで売ったことが一度だけあります。
課題は滞りなく完成したようで、クレジットタイトルに店の名前も入れてくれたという話で、その後母の日に花を買いに来てくれたという、ちょっと映画みたいな話でした。