花のある生活は良いものです。切り花を飾ると、造花とはまったく違う彩りや香り、生き生きとした生命力が部屋に満ちて、何気ない毎日を幸せな気持ちにさせてくれます。
生物なのでいつかは枯れてしまうものですが、できるだけ長く、きれいな状態で楽しみたいですよね。切り花は正しい方法でていねいに面倒をみてあげると、ただ飾っておくだけよりもぐんと長持ちします!花屋さんでプロもやっている切り花の手入れ方法を覚えて、新鮮なお花を長く楽しみましょう。
フラワーアレンジメントにあった花瓶を選びましょう
切り花をいちばん美しく飾るのに、花瓶は重要な要素です。フラワーアレンジメントに合わせて、見た目重視で選びがちですが、その結果、花の量に比べて小さいものを選んでしまうと、花瓶の中で茎や葉っぱが渋滞してしまい、腐りやすくなってしまいます。
茎や葉が腐ると、花が咲き切る前に枯れてしまったり、水が汚れたり、細菌が繁殖する原因になってしまうので、切り花が余裕をもって収まる大きさの花瓶を選びましょう。
花瓶がない!どうしよう…?
ちょうどいい大きさの花瓶がないよ~~!という場合には、家にあるものを花瓶代わりにしてみましょう。飾り方を工夫すると、ふつうに花瓶に飾るよりも小洒落た雰囲気になって楽しいです。
大きな花束を飾れる花瓶がないときには
無理に小さな押し込むよりも、いくつかに分けて、ゆったりと飾りましょう。どういうふうに分けて飾るかを考えるのも、花屋さんごっこをしているような気持ちになって楽しいです。
余分な葉やつぼみを取り除きましょう
市場から届いたばかりのお花は、切られたままの状態で茎の切り口までびっしり葉がついていたり、小さなつぼみが付いたままの状態になっています。
多くの花屋さんでは売り出す前に処理しますが、それでも買った人が好きにアレンジできるように茎を長く残していたりするので、花瓶の高さに合わせて切ったら茎中葉っぱだらけ…なんてことも。
根っこのない切り花は、吸い上げられる水の量が限られています。葉やつぼみがたくさんあると、限られた水分を花全体に十分に行き渡らせることができずに、主役の花が弱ってしまうので、茎の下半分くらいの葉や、なくても見た目に影響のなさそうな小さなつぼみは思い切って取ってしまいましょう。
それなら葉はぜんぶ取っちゃったほうが良いんじゃない?というとそういうわけでもなく、すべて取ってしまうと、今度は葉で光合成をすることができなくなってしまいます。ですので、上の方についている、新鮮な葉っぱは数枚残しておきましょう。
花粉も取りましょう
雄しべに花粉の付いている花は、受粉する前に花粉を取ってしまうのが理想的です。雌しべに花粉が付いた花は役目を終え、枯れるのが早くなってしまいます。
とくにユリは、花粉が花びらに付いてしまうと汚らしく、手や服やカーペットなどに付くとなかなか落ちない曲者。花が開き始めたら、花粉が粉状になる前にサッと摘んで取ってしまうのがベストです。
もし服やカーペットに付いてしまったら、あせってゴシゴシこすらずに、正しい方法で取ると簡単にきれいにできます。
枯れた花も取りましょう
同じ日に購入した同じ花でも、花の種類によって長持ちしやすかったり、逆にすぐに枯れてしまうこともあります。一つの茎にたくさん花が咲いている場合は、上の方はきれいに咲いているけど、下の方から枯れ始めてしまうのも自然なことです。
枯れてしまった花はそのままにせずに摘み取ってしまうか、茎ごと捨て、まだ咲いている花から遠ざけましょう。見た目をきれいに保つのもそうですが、枯れてしまった花が放出するエチレンガスが花が枯れるのを加速させてしまいます。
つぼみを咲かせるにはどうすればいい?
ユリやトルコキキョウ、シャクヤク、カーネーションなどの花は、小さくて固いつぼみがたくさん付いていることもあります。あんまり小さなつぼみは、早くに切り花にしてしまうと咲かない場合もありますが、水に栄養分を混ぜておくと開花する場合もあります。
つぼみのたくさん付いている花を飾る場合には、水分や栄養分が分散してしまわないように、光合成に必要な葉を残して余分な葉やつぼみを間引く(取り除く)ことがとくに重要です。
花を咲かせるための栄養素が十分に届けられるように、水に切り花用の栄養剤を加えたり、砂糖などの糖分を混ぜましょう。
根本を切りましょう
根っこのない切り花は、根本の切り口から吸い上げる水に依存しています。その切り口が乾燥してしまっていたり、細菌が詰まってしまっていたりすると、十分な水が花に届かずに弱ってしなしなになったり、枯れてしまう原因に。
根本はできれば毎日切り戻して、切り口をきれいな状態に保ちましょう。花屋さんでは、水切りという普通に切るよりもさらに効果的な方法で根本を切っています。かんたんにできるので、ぜひ実践してみてください。
水切りのやり方
根本を切るときに避けたいのが、切った断面が乾燥してしまうこと。水切りでは、茎を水中で切ることで、切ったときに空気に触れるのを防ぎ、断面の乾燥と、水を吸い上げる導管に空気が入ってしまうのを防ぎます。
清潔で切れ味の良いハサミを使いましょう
水切りをするときに大切なのは、手入れのされた清潔で切れ味の良いハサミを使うこと。切れにくいハサミを使うと導管を潰してしまったり、ハサミの汚れが管に入って詰まってしまったりします。研がれたハサミで一気にスパッと切るのが大切です。
また、切るときには平らに切るのではなく、水に触れる切り口が広くなるように斜めに角度をつけましょう。水に触れている面積が広いと、その分水を吸い上げることができます。
水を清潔に保ちましょう
花瓶の水を新鮮に保つのも、切り花を長く楽しむために重要な事柄です。どれくらいの早さで水が汚れるかについては、季節、花を飾ってある場所、花の状態、水になにか混ぜているかどうかで異なりますが、基本的には毎日水を替えるのが好ましいです。ストレスにならない程度に、水切りとセットで行いましょう。
とくに夏場は水が汚れるのが早いです。バラなどの繊細な花や、ヒマワリやストックなど水の汚れやすい花を活けている場合には、朝晩2回水を替えるくらいでも丁度いいこともあります。
花が水を吸ったり蒸発したりして、翌日には花瓶の水が半分以上に減っていたりすることもあります。そういう場合でも、きれいな水を足すだけの横着はせずに、汚れた水は捨てて新鮮な水に取り替えましょう。
水を変えてもすぐに臭くなってしまう?
気温や花の種類によっては、びっくりするくらい早く水が嫌な臭いを発することもあります。1日にそう何度も水を交換していられないよ~~!という場合には、防腐効果のある切り花用の延命剤を使ったりするのがいいですね。
花瓶も洗って清潔に保ちましょう
水を替えるときに、ただ水を捨てて入れるだけでなく、いっしょに花瓶の中を洗って汚れを落としましょう。花を活けている花瓶はヌメヌメしていたり、細菌が繁殖していたりします。すすぐだけでは落としきれない汚れなので、スポンジを使ってしっかり洗って水を替えましょう。
水に浸かっていた茎の部分もヌメヌメするので、軽くこすってヌメリを落としてから水切りし、きれいになった花瓶に活けるのが好ましいです。腐りやすい茎の腐り防止にもなりますよ。
水の入れすぎに気をつけましょう
花瓶に水がたくさん入っていればたくさん水を吸い上げるだろう、と思いがちですが、いくら水の量を増やしても、切り花が水を吸い上げられるのは根本の切り口だけ。
それどころか、茎や葉が水に触れていると腐りやすく、花が痛むことで水も汚れやすくなってしまって良いことなしです。
水の量は、つぎに水の交換をするときまでに、花瓶の水が蒸発したり花が吸ったりしてなくなっていないくらいの量が適量。花瓶の大きさにもよりますが、底から3~5センチ程度の水を入れるくらいがちょうどいいです。
涼しくて風通しが良い場所に飾りましょう
切り花は飾る環境によって開花するスピードが早くなったり、すぐに枯れてしまったり、腐りやすくなってしまいます。どの切り花にも最適なのは、風通しが良くて涼しい日陰。ちょうど人間にも過ごしやすい場所が、切り花にもぴったりです。
玄関が好ましい場合が多いですが、切り花は見て楽しむものなので、飾る場所が限られてしまうのも残念ですよね。とくに避けたい以下の4点に気をつけて、できるだけ花が長持ちする場所に飾りましょう。
過剰に暖かい場所を避けましょう
直射日光の当たる場所や、暖房を強く効かせた部屋に飾ると長持ちしません。暖房の風や熱が直接当たる場所、ストーブの上なんかは絶対に避けたいです。使用中に熱くなるテレビやパソコン、デスクランプのそばも控えましょう。
エアコンが直接当たる場所も好みません
切り花は弱い風でも葉や花びらに触れると水分を失ってしまい、傷んだり枯れてしまったりします。エアコンの効いた部屋に飾る場合には、風が直接当たる場所を避けて、空気の動かない場所に飾りましょう。
同じ理由で、扇風機や、強い風の入ってくる窓のそばも避けたいです。
24時間明るい場所も避けましょう
切り花は生きているので、夜暗くなると葉の裏にある気孔を閉じて、水分が蒸発するのを防ぎ、日中失った水分補給をしています。
24時間明るい部屋に置いておくと、いつ気孔を閉じて良いのか分からずに気孔が開けっ放しの状態になり、水分不足に陥ってしまうので、1日中蛍光灯を点けっぱなしの場所に飾りたい場合には、夜になったら暗い場所に移動するのが理想的です。ひとが夜になったら布団に入るような感じですね。休息は大切です。
果物、成熟した花のそばを避けましょう
植物はエチレンという植物ホルモンで成長します。果物や成熟した花、枯れてしまった花はエチレンガスを放出し、ほかの植物の老化を促進してしまうので、新鮮な切り花をそばに飾ると開花して枯れるのが早まります。
とくにエチレンの産出率の高い、リンゴ、アボカド、パッションフルーツ、メロンと同じ部屋に飾るのは避けたいです。
専用の栄養剤を使いましょう
切り花専用の栄養剤や延命剤を水に混ぜることで、切り花の持ちを長くすることができます。
なかには、これを使えば水を替える必要なし!という宣伝のついたものもありますが、どんな栄養剤を使ってもやはり水は汚れてしまいます。花の栄養剤はばい菌の栄養にもなってしまい繁殖しやすくなることも多いので、やはり毎日の水換えは欠かさずに行いたいです。
家にあるもので代用できる?
頻繁に切り花を購入するわけではないし、専用の商品を買うほどではないな~という場合には、家にあるもので延命剤の変わりにすることもできます。インターネット上に流れている情報の中には、それは効果はないんだよなあ…というものや、使い方を間違えると逆効果だから気をつけて!というものも。
詳しくはこちらのページで紹介していますが、よく見かけるものの使用方法や効果についてまとめてみました。なにをどれくらい、どういう目的で使用するのか、しっかりと理解してから活用しましょう。
ハイターなどの漂白剤
漂白剤は菌を殺してくれるので、水に加えることで細菌が繁殖し、水が腐るのを遅くする効果があります。冬場、涼しい場所に飾ってある花の水を毎日交換している場合には必要ありませんが、夏で1日になんども水換えをできない場合などに有効です。
花瓶の大きさにもよりますが、ほんの1滴水に混ぜるだけでいいので、入れすぎにはくれぐれも注意が必要。入れすぎると花を枯らしてしまったり、漂白して花や茎の色がなくなってしまったりします。たまに見かける、ハイターを入れたら花が長持ちするどころか枯れるのが早くなった!というのは、ほとんどが入れすぎが原因です。
また、漂白剤には花の栄養になる成分は入っていないので、加えることで花自体を長持ちさせることはできません。
十円玉
銅には細菌の繁殖を抑える効果があるので、十円玉を水に入れておくことで銅が水中に溶け出し、漂白剤と同じく水が腐るのを遅らせることができます。しかし、一枚の十円玉から溶け出す銅の量はほんの少しだけ。漂白剤とおなじくらいの効果を期待するには、たくさんの十円玉が必要になります。
ほかに何もないときに入れないよりはまし、くらいの気休めにしかならないので、水を替えるときに出したり入れたり洗ったりするもの面倒ですし、ハイターがあればそっちのほうが効率的かな、と個人的には思っています。
サイダーなどの炭酸飲料
炭酸飲料に溶けている果糖ブドウ糖液糖が切り花の栄養になるので、水に加えることで花を長持ちさせたり、つぼみを咲かせる手伝いをしてくれます。
果糖ブドウ糖液糖は水に溶けやすく、粒子が小さいので花が吸い込みやすいんです。花瓶の水に対して1対5くらいの量で、気の抜けたサイダーを加えことで効果が期待できます。
気をつけたいのは、糖分を入れることで花瓶の水が汚れるのが早くなってしまうこと。とくに夏場は漂白剤と合わせて使用するか、毎日水を替えることを忘れないようにしたいところです。
砂糖
サイダーなどの炭酸飲料と同じ理由で、砂糖も切り花の栄養になります。炭酸飲料のほうが吸収されやすいので、自宅にあるようなら炭酸飲料を使ったほうが効果的ですが、ない場合には砂糖を使っても大丈夫。花瓶の大きさや水の量に合わせて、小さじ1~2杯の砂糖を混ぜましょう。
やはり水は濁りやすくなるので、漂白剤といっしょ使うのがおすすめです。
ウォッカ
ウォッカにはエチレンガスの放出を抑える効果が期待できます。エチレンガスを抑えることで花の成長を遅らせ、結果的に長持ちさせることができます。もし家に開封済みのものがあるようでしたら、一滴花瓶の中に垂らしておきましょう。
サイダーや砂糖同様、水に異物を混ぜるとどうしても汚れるのは早くなってしまうので、漂白剤と合わせて使用するのが好ましいです。
自家製栄養剤の作り方
家にあるものをひとつ使うだけでも効果がありますが、合わせて使うことで市販の栄養剤と同じか、それ以上の効果が期待できます。
切り花と相性の良いサイダーやスプライトなどの炭酸飲料を水に対して5対1の量で加え、バクテリアが繁殖するのを防ぐために漂白剤を1滴混ぜるだけ!とてもかんたんに作れます。
それでもやはり花瓶の水は汚れてしまうので、毎日の水替え、水切りも忘れずに行いましょう。
切り花の元気がないときにできること
できる限りのお世話をしてみても、もともと元気のない花だったりすると、すぐに茎が弱ってくたっとしてしまったり、まっすぐにならずに頭が下がってしたりします。
しかし!仕方ないや…と諦めて捨ててしまう前にできることあります!花の種類によってはかなり効果があるので、騙されたと思って試してみてください。
茎を思い切って切ってみましょう
水切りでは根本を少しだけ切りますが、もしかしたらもっと上の導管が詰まっていて、水が行き渡っていないのかもしれません。思い切って茎を短く切って水につけてみたら、元気になる可能性があります。
また、単純に茎が短いほうが花に水が届きやすいので、フラワーアレンジメントと相談して、茎はできるだけ短めにするほうが元気な状態を保ちます。
頭ごと水に浸してみましょう
これは花の種類を選びますが、花を逆さに持って、丸ごと水に浸してじゃぶじゃぶに濡らしてみると、花びらからも水分を吸い、シャキっとするものもあります。ヒマワリやアジサイ、ルスカスやツバキなどの葉物は丸ごと濡らすことでびっくりするくらい元気になります。
しかし、バラやユリ、カーネション、チューリップなど、花びらを濡らすのは厳禁なものも多いので、これは大丈夫!と自信が持てない場合には、花びらは濡らさずに、葉っぱの裏に霧吹きで水を掛ける程度に留めましょう。
切り花に虫がついていたら
農薬を使用していない切り花や、お隣さんが分けてくれる庭の花なんかには、虫がついていることがまれにあります。花屋さんでは気をつけて確認していますが、隅に隠れていたり、小さなたまごが付いている場合など、どうしても見落としてしまうことも。
そんな場合でも、ぬるま湯にそっと浸けて虫を取り除いたり、殺虫剤を使って撃退することは可能です。気持ち悪くて花ごと捨ててしまう前に試してみてください。
新鮮な切り花を選ぶことも大切!
花屋さんではできるだけ商品の切り花を新鮮に保つ努力はしていますが、それでも花市場から届きたての花と、店で3日、4日過ごした花のどちらのほうが長持ちするかと言うと、言うまでもなく届きたての花のほうが長持ちします。ですので、できるだけ花市場から届いたばかりの新鮮な花を選ぶようにしましょう。
また、花の種類によっても長持ちしやすかったり、あまり持たなかったりします。花の種類にこだわりがない場合には、丈夫で長持ちする花を選ぶのもいいですね。
種類別!花を長持ちさせる方法
わたしが花屋さんで身につけた、基本的な切り花を長く楽しむコツを紹介しました。どの花にも共通するテクニックですが、花によって少しずつ違ったお世話を好む場合もあります。
より具体的な内容をお探しでしたら、ぜひこちらもご確認ください。
ユリ
チューリップ
ヒヤシンス
カーネーション
アジサイ
ひまわり
トルコキキョウ
ダリア
かすみ草
スターチス
サクラ
コスモス
スイートピー
ユーカリ
ラベンダー
プロポーズにもらった特別なバラ
まとめ
いろいろ書いてみましたが、最低限やりたいのは、毎日(無理だったらストレスにならない程度に頻繁に)の水替えと、水を替えるときに根本を少し切ることと、直射日光とエアコンの風を避けた場所に飾ることです。これだけでもかなり長持ちします。
急にすべての項目を網羅するのは、なかなか難しと思います。とりあえず今すぐできること、家にあるものでできることから始め、花を買う頻度や好きな花の種類に合わせて、自分に合った環境作りをしていくのが良いですね。